様々な環境問題が深刻化し、世界でも多くの取り組みが実施されるようになってきた昨今。
日本でもテレビ番組やニュース、教育の過程で子供達が環境問題に触れる機会が増え、「エコ」という言葉だけでなく、「サステナブル」「SDGs」や「CO2排出」「脱プラスチック」など、今まで子供達に馴染みのなかったキーワードまで年々認知度が増してきているように思います。
本記事では中学生の学習内容に基づき、地球が直面している環境問題の現状と、私たちの消費生活と環境問題の関係性、環境に配慮した生活を実践する方法をご紹介いたします。
地球が直面する環境問題の現状
地球は現在、気候変動、生態系の破壊、大気汚染、資源の枯渇など、多くの深刻な環境問題に直面しています。ここでは、これらの環境問題の現状に焦点を当ててご紹介いたします
気候変動
気候変動はおそらく最も顕著な環境問題の一つです。温暖化により、熱波、洪水、ハリケーンなどの極端な気象現象が増加し、海面上昇が進行しています。これは沿岸地域や低地の国々にとって大きな脅威となっており、農業や食料供給にも悪影響を及ぼしています。
生態系の破壊
生態系の破壊も深刻な問題です。森林伐採や自然への干渉により、種の絶滅が進行しています。これにより、生態系のバランスも崩れ、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。
大気汚染
大気汚染は都市部で特に深刻です。化石燃料の燃焼により、大気中に有害なガスや微粒子が放出され、健康問題を引き起こしています。これは呼吸器疾患やアレルギーの増加など、人々の生活に直接影響します。
資源の枯渇
資源の枯渇は将来の課題でもあります。地球上の有限な資源を無駄に消費してしまっているのが現状です。これに対処するために、再生可能エネルギーの推進や資源の効率的な利用が必要となってきています。
人の生活によって脅かされる地球の未来
科学技術が発達し、人間がより豊かに生活を送れるようになっていく一方、人間の活動による環境への影響は急速に増加しており、地球の未来が脅かされています。ここでは具体的に私たちの生活の中のどのような行為が地球の未来に悪影響を及ぼすのかご紹介いたします。
エネルギーの浪費
私たちの生活に不可欠なものの一つに電気があります。現在も原子力発電、火力発電が主な発電方法として採用されており、これらは多くの温室効果ガスを排出しています。化石燃料の燃焼は地球温暖化を促進し、異常気象や海面上昇などの問題の原因にもなっています。 環境に配慮された電気エネルギーとして、再生可能エネルギーが注目を集めていますが、導入にかかるコストや、発電効率の課題などから、主力の発電方法として採用されるほどは普及していません。
交通手段
技術やサービスが発展するにつれ、様々な移動手段が選べる世の中になりましたが、距離や用途に応じて適切な交通手段を選ばないと必要以上に温室効果ガスを排出してしまうことになります。 飛行機での移動においては、他の移動手段よりも温室効果ガスを比較的多く排出することから、環境配慮の観点で「飛行機で移動することは恥だ」という意味合いの「 飛び恥(フライトシェイム)」という言葉が注目されました。飛行機、自動車、電車、自転車、徒歩の順で排出される温室効果ガスは少なくなっていきます。
資源の浪費
私たちの周りはたくさんのモノで溢れかえっています。私たちが購入するものの多くは、木材、鉱物、水、石油などの地球上の限りある天然資源が使用されてできた加工品です。持続可能な資源管理なしに、これらの資源は枯渇し、将来の世代に不足をもたらす可能性があります。また、石油が元となって作られる「プラスチック製品」に関しては、物としての役割を終え、廃棄物となった後も、自然に還らず悪影響を及ぼすゴミとして残り続けてしまう可能性があります。
廃棄物の増加
人口の増加、経済成長、消費文化の拡大により、特に都市部での廃棄物の量が増えています。先に述べたプラスチックごみに加え、電子廃棄物など廃棄後に土壌汚染や海洋汚染の原因となる廃棄物の量が増加していることも大きな問題です。
ごみの埋立地にも限りがあり、2040年には日本の埋立地はなくなってしまうとされています。これらを受けて、廃棄物のリサイクル率を高め資源を最大限に活用する、ゴミを焼却した灰を埋め立てずに再利用するなど、廃棄物への様々な対策がなされています。
また、近年ではプラスチックごみが海へと流れ出てしまう「海洋プラスチック汚染」が環境問題の中でも深刻化し、早急な対応が全世界に求められています。このままのペースでゴミの量が増えると2050年には魚の量よりもゴミの量が上回る可能性があるとされています。
現代の中学生が学ぶ環境問題の内容とは?
東京都が公開している中学校の技術・家庭科の教育指導資料によると、第3学年「環境や社会を変える消費生活を考えよう」では、下記の目標が掲げられています。
- 自分や家族の消費生活が環境や社会に及ぼす影響について理解する。
- 自分や家族の消費生活の中から問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、計画を立てて実践した結果を評価・改善し、考察したことを論理的に表現するなどして課題を解決する力を身に付ける。
- 自分や家族の消費生活について、課題の解決に主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し創造し、家庭や地域などで実践しようとする。
このように、中学生の授業の中にはエコバッグやマイボトルの使用率からその理由を分析したり、環境負荷につながる行動やサービスに対して意見交換をしたりするなど、数年前までは大人でも考えていなかったことに子供達が取り組む現状があります。
中学生向け!環境保全のための取り組み6選
私たちの生活は、全て環境問題に繋がっていると言っても過言ではありません。エコバッグを持ち歩く、エアコンの節電を心掛けるなど、暮らしの中でも環境問題につながるわかりやすい事例はいくつかありますが、ここではさらに一歩先を見据えたサステナブルな取り組みをご紹介いたします。
①購入は必要な分だけ
「量り売り」という販売方法で食品や生活用品を購入できるお店が増加しています。現代ではスーパーに並んでいるたくさんの野菜もビニール包装され、複数で売られているのが当たり前。ですが、量り売りに取り組むお店では、自分のエコバッグや容器を持ち込んで商品を必要な分だけ買うことができます。ビニール包装を削減することで脱プラスチックになり、食品を必要な分だけ買うことでフードロスも防げる「量り売り」。ぜひ自分の住む地域にも取り組んでいるお店がないか探してみてください。サステナブルな取り組みに力を入れている企業を見つけて「その企業のものを選ぶ」というアクションで応援することも消費者としてサステナブルな未来を実現するために重要なことの一つです。
②季節の食べ物、その土地の食べ物を
食品の生産地から食卓に並ぶまでの輸送にかかった負担量を「食料の重さ(t)」×「輸送距離(km)」で計算することで、輸送時のエネルギー量から二酸化炭素排出量を把握できる「フードマイレージ」。これは輸送に限定した地球環境への負担度を示すため、地元で生産した食物を地元で消費する「地産地消」はフードマイレージが低く、環境に配慮した取り組みといえます。その土地の旬ではない野菜や果物は、遠くの県や海外などの別の場所から輸送されていることが多いため、フードマイレージが高いことが多いです。
③繰り返し使えるラップを食品保存に
プラスチック製のレジ袋をエコバッグに置き換える人は多くなってきましたが、毎日のように食品の保存に使うラップに関しては何も意識せず使い捨ててしまっている人が多いのではないでしょうか?ラップも市場に多く出回っているものはプラスチック製。プラスチックごみを出さずにプラスチック製ラップを使うことはできません。そんな便利だけど環境に優しくないラップに置き換えられるのが「蜜蝋ラップ」。主な原材料は、オーガニックの布とミツバチから生成される蜜蝋の2つなので、地球にも食品にもやさしいラップです。蜜蝋の特性により、手の温もりで形状を保持できることから何度も繰り返し利用することができます。
④自然に還る素材選びを
プラスチック製のストローが鼻に刺さってしまったウミガメの動画を見たことはありませんか? 拡散されたこの動画は、プラスチックごみの悪影響を世の中に広めました。
バイオマスプラスチックなど自然に還ることに注力した製品は、今もなお進歩が続いていますが、一番分かりやすく簡単なのは生分解性を持たないプラスチック製品を、生分解性を持つ自然由来の素材で作られた製品に置き換えることです。 最近では、比較的有名な紙ストローの他にも、紙製のカトラリーセット、竹製の歯ブラシ、とうもろこしなどのデンプンが原料のコップなど、商品の種類が年々増えています。 また、何度も繰り返し使えてゴミを出さないという側面から、耐久性の高いシリコン製の製品もサステナブルな製品として注目されています。
繰り返し再利用するためには、物を大切に扱わなければなりません。使い捨てが当たり前になってしまった現代、サステナブルな考え方で生活するということは物へのありがたみを再認識するきっかけとなるかもしれません。
⑤近い目的地へは徒歩・自転車を
近くのスーパーやコンビニへ買い物に行くのにも自動車を使ってしまっているという方はいませんか?自動車は飛行機の次に一人当たりの温室効果ガス排出量が多いとされています。近い距離で、荷物も少なく済む場合には、ぜひ自転車や徒歩で外出してみてください。ただし、電動アシスト自転車に関しては電気を使っているので、厳密にいえば火力発電、原子力発電からの電気エネルギーを利用している可能性が高いということを理解しておく必要があります。
また、電車、バスも一度に多くの人を運べるということでエコな移動手段といえます。電車によっては、走らせるための電力を100%再生可能エネルギーでまかなっている電車もあるそうです。
⑥配達時間には家に
ネット通販などで宅配便を頼んだものの、配達してもらうときに不在にしてしまったことはありませんか?近年、ネット通販が急速に拡大したことで、宅配便の再配達が増加し、再配達のトラックから排出されるCO2の量は、年間でおよそ25.4万トン(2020年度国交省試算)と推計され、重大な社会問題の一つとなっています。
自動車の一人当たりの温室効果ガス排出量が飛行機に次いで多いことを上述しましたが、再配達を減らすことで自分が乗車する以外にも自動車から排出される温室効果ガスの削減に貢献することができます。 誰でも利用できる宅配ボックスのサービスや自宅前に宅配物を置いてもらう「置き配」もネット通販において一般的な選択肢となりました。これらのサービスを利用したり、自身のスケジュールを事前に確認したりすることで再配達をできるだけ避け、無駄な温室効果ガスの排出しないように心掛けましょう。
まとめ
今回は、学校で中学生が学ぶ環境問題に目を向け、消費生活に焦点を当てた内容でご紹介いたしました。普段、生活の中で直接目に見えていない部分でも環境問題に繋がっているかもしれないということに気づくきっかけになれば幸いです。様々な視点から日々の生活を眺めてみることで、暮らしの中で自分が手をつけやすい環境配慮の取り組みも見えてくると思います。地球に優しく、しかし無理をせず、わたしたちの未来がより豊かなものになるように、環境問題を意識した生活を送ってみてください。
(参考1)東京都教育委員会|◇中学校技術・家庭科(家庭分野) 第3学年「環境や社会を変える消費生活を考えよう」
(参考2)国土交通省|宅配便の再配達削減に向けて
(参考3)日本財団ジャーナル|2050年の海は魚よりもごみが多くなる?今すぐできる2つのアクション
(参考4)環境省|地球環境の現状と課題