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海外駐在員がお届けする世界の環境情報を解説|香港編

海外駐在員がお届けする世界の環境情報を解説|香港編

カンキョーダイナリーを運営する大昭和紙工産業の駐在員がお届けする海外の環境問題対策ニュース 香港編。

 

実際に現地に住んでいるからこそ分かる、香港政府や企業の環境問題に対する取り組みや街の状況を現地からお届け。日本との違いを読み解き、解説していきます。

現地の環境問題関連情報を調査!

現在、香港では「香港資源循環青写真2035」という目標を掲げ、6つのアクションに取り組んでいます。2035年を目処にごみの埋め立てをゼロにする目標であり、ごみの削減や資源の再利用を強化しています。

 

中期目標|
ごみの有料化を実施し、一人当たりのごみの廃棄率を40〜45%に下げ、再利用率を55%にあげる。

長期目標|
廃棄物を再生エネルギーに転化する施設を増加し、埋め立ての利用減少を図る。

 

すでに施行されている制度やこれから施行されることが決定している制度など、リサイクルに対して注力していることがよくわかります。

 

表が切れている時は横にスワイプしてください ⇒

6つのアクション 内容
①廃棄物減少に向けての取り組み ・ごみ有料化(2024年4月〜 予定)
・プラスチック製飲料容器の製造者責任制度(検討中)
・ガラス製飲料容器の製造者責任制度(2023年4月〜 実施中)
・プラスチック製使い捨て食品容器やその他製品の規制(2024年4月〜 予定)
②廃棄物仕分けについての取り組み ・リサイクルスポットの増加
・古紙収集・回収向上促進
・生ごみ収集・回収向上促進
・廃プラ収集・回収向上促進
③資源ごみ再生についての取り組み ・生ごみ回収によるバイオマス発電の技術改良
・木材回収、再生施設「Y park」稼働開始
・紙パルプ処理施設の設立を検討
・産業廃棄物の回収施設の設立を検討
④業界への支援 ・リサイクル業界への支援拡大
・グリーン購入の項目増加
・政府が管理するリサイクル専用工業団地「Ecoパーク」増築
・グリーン職業の人材支援・補助金
⑤研究・開発 ・Green tech fund補助金
・生ごみ回収・処理についての技術開発
・廃棄物の削減・回収についての技術開発
・「Zero Waste City」展開について大湾区ほかの都市と交流・検討
⑥教育・普及 ・廃棄物減少・リサイクルについての意識啓発
・使い捨てプラスチック食器の利用減少についての普及促進
・廃棄物減少を促進するためのプロモーション実施
・生産者向けにプラスチックパッケージの利用減少を推奨

 

では、具体的にはどんな取り組みがされているのでしょうか? 

使い捨てプラスチック

 

2009年からコンビニやスーパーなど一部の小売店を対象にプラスチック製のレジ袋の有料化が始まり、2015年からはすべての小売店で使用するプラスチック製のレジ袋が有料対象となりました。この段階では1枚当たりHK$0.50以上でしたが、2023年からは1枚当たりHK$1.00以上に値上げし、さらにレジ袋の利用量削減を目指しています。ちなみにHK$1.00は、現在の日本円に換算すると約18.97円です(2023年9月22日時点)

 

一方、日本では2020年7月からプラスチック製のレジ袋の有料化がスタートしたので、香港から11年も遅れてのスタートとなりました。
また、日本のレジ袋の販売価格は1枚1円以上となっているので、価格面から見ても日本の有料化制度は香港と比べるとまだまだ優しいように思います。

 

また、日本では紙袋であれば有料の対象ではありませんが、香港では持ち手がプラスチックであったり、表面がラミネート加工されていると有料対象となります。一方で、飲食店は有料化対象外となっており、パン屋さんなどでも衛生上の理由で無料でプラスチック製のレジ袋がもらえます。

 

とはいえ、香港では日本よりも10年以上も前から有料化に取り組んでいることから、マイバッグを持ち歩く文化や生活が浸透している印象です。

 

 

また、2024年4月22日から予定されている「使い捨てプラスチック食器の規制」により、プラスチック製のカトラリーやストロー、テイクアウト用カップや容器は段階的に使えなくなっていきます。規制がスタートすると紙、木、竹、パルプモールドといった天然由来の素材に代替したカトラリーや容器へと変わっていきます。

 

日本では、やっとレジ袋の有料化が馴染んできたところなので、まだ香港のような動きは見られないかと思いますが、将来的には同様の動きがあるかもしれません。

ごみ袋の有料化

香港で販売が始まった有料のごみ袋

 

日本ではすでに多くの自治体でごみ袋が有料化になっていますが、香港では2024年8月から有料化になることが予定されています。

 

香港の現状は、ごみ袋に特に規定がなかったので、一般的には買い物のレジ袋をごみ袋として再利用したり、 管理会社から配られたごみ袋を使ったりしているため、自分たちでごみ袋を買うという習慣がない人が多いです。 そのため、実際に開始になるとかなり面倒に感じる人が多くなると思われます。また、規定のごみ袋に入れているかの確認や、不法投棄の管理などがどのようにされるのかが不安要素となっています。

 

実際に、当初は4月1日から有料化を開始する予定でしたが、市民への理解が進んでいないことから4ヶ月の延期が決定しました。政府機関での有料化は予定通り4月から始まりますので、今後の動向にも注目です。

 

また、すでに指定ごみ袋の販売が始まり、サイズは3L〜100Lの全9サイズ展開。価格は、1L当たり約11セントとなっています。

 

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サイズ 販売価格 1枚当たりの価格
3L (40枚入り) HK$ 12.00 HK$0.30
5L (40枚入り) HK$ 24.00 HK$0.60
10L (40枚入り) HK$ 44.00 HK$1.10
15L (40枚入り) HK$ 68.00 HK$1.70
20L (40枚入り) HK$ 88.00 HK$2.20
35L (40枚入り) HK$ 156.00 HK$3.90
50L (40枚入り) HK$ 220.00 HK$5.50
75L (20枚入り) HK$ 170.00 HK$8.50
100L (20枚入り) HK$ 220.00 HK$11.00

 

(2024/3/11更新)

ごみの焼却を再開

ごみ処理場の様子

 

以前は、香港でもごみの焼却を行っていましたが、環境への影響を配慮し、2000年ごろに全てのごみ焼却施設を閉鎖しました。

 

しかし、稼働中のごみ埋立地の残余容量が減少しつつあり、新たなごみ埋立地がなかなか開発できない現状から、焼却によるごみ処分にした方が環境へのメリットが大きくなってきます。「ごみの埋め立てをゼロに」という目標を掲げ、焼却を再開すべく、新たな焼却施設「I PARK」がいま建設されています。

 

ごみの分別習慣がないので、分別し、リサイクルしつつも、焼却で埋め立てをゼロにするという大きな取り組みに向け、動き出しています。

 

 

ガラス製飲料容器の製造者責任制度

香港のガラス製飲料容器の製造者責任制度

 

2023年4月から開始された「ガラス製飲料容器の製造者責任制度」は、生産者・輸入者に対して、ライセンス登録・回収報告・政府へ費用を納めるなどが義務付けられています。

 

香港では、以前から生産者が容器の回収を促進するためにリターナブル瓶のシステムが取り入れられています。消費者が飲み終わった牛乳やソフトドリンクの瓶を販売店に返却すれば、HK$1が戻ってくる仕組みです。そのため、今回の新たな制度による一般消費者への影響はそこまで大きくありません。

 

また、日本では毎週瓶の回収日がありますが、香港には分別回収する仕組みがないため調味料等の瓶容器は消費者が自発的にリサイクルスポットに持っていっています。

 

香港のごみ回収スポット

 

街中のごみ箱

香港の街中にあるごみ箱

 

日本ではコンビニや一部の駅にしかごみ箱が設置されていませんが、香港ではマンションや街中に多くのごみ箱が設置してあります。分別をしていないので、気軽にごみを捨てることができます。

 

一方で、香港には日本ほど自動販売機が設置されていないので、ペットボトルや缶といった飲料容器のリサイクルボックスは日本の方が多く捨てやすいです。

 

また、山沿いや公園などよく犬の散歩に利用されるエリアには犬のフン専用のごみ箱が設置されます。日本と比較すると、愛犬家には便利な街になっています。

 

香港にある犬のフン専用のごみ箱

犬のフン専用のごみ箱

香港ってどんなところ?

香港ってどんなところ

 

香港は中国の南東端にある、東京都の約半分ほどの面積(総面積約1,100平方キロメートル)に約749万人(2023年中旬時点)が暮らしています。

 

日本との時差は−1時間。気候は亜熱帯に分類され、一年のうちほぼ半分の期間は温暖な気候に恵まれています。冬の気温は10℃を下回ることもあり、夏には31℃を超えることがたびたびあります。

 

公用語は中国語と英語で、英語は政府内や法律関係、専門職、およびビジネスの各分野において、広く使用されています。香港では、高い教育を受けた有能なバイリンガル、さらには英語、広東語、標準中国語の3言語を流暢に話すトリリンガルの人材が豊富です。

 

また1世紀半に及ぶイギリス統治を経て、1997年7月1日に中華人民共和国の特別行政区となりました。香港の憲法である基本法に記された一国二制度の原則のもとで、香港は行政権、立法権、司法権を含む高度の自治権を享受しています。この原則により香港は、コモンローに基づく法制度と市場経済、資本主義体制を保持しています。また、香港は世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力(APEC)などの国際的なフォーラムにも、独自の立場で参加しています。

香港営業所の紹介

大昭和紙品(香港)有限公司オフィスの写真

 

大昭和紙品(香港)有限公司は1993年の立ち上げ時より日本で培った経験をもとに、紙加工のスペシャリストとして『貼箱や紙袋などの製品パッケージ』『しかけ絵本』『グリーティングカード』の生産実績と技術を積み重ねてきました。

 

香港大昭和で手がけた飛び出す絵本

 

香港大昭和で手がけたカード

 

現在では「使い捨てプラスチック規制」に伴い、紙製食品容器・紙コップ・プラ製品以外のカトラリーなどの販売に力を入れ、香港内でのオンラインショップも立ち上げました。

 

 

また、大昭和グループの大きな役割の一つとして循環型素材の代表である「紙」をもっと世の中に広めていくことが現在の地球環境を見ても重要だと考え、積極的に取り組んでいます。

 

記事情報を教えてくれた現地駐在員

 

国際色豊かでエネルギッシュな香港に赴任して約9年、大昭和紙品(香港)有限公司で代表を勤めている﨑口です。

 

大規模な民主化デモを経験したりもしましたが、香港の文化・食・自然を満喫しながら元気に働いています!今はまだ、環境問題に対して私達ができることは小さなことですが、全ての生き物が安心して育まれるよう紙加工品を通して地球貢献を続けていきたいと考えながら、日々仕事をしています。

 

週末は飲茶やキャンプ、息子のサッカー練習や試合に付き添い楽しんでいます!様々な人種の方達との交流も多いので、子供を育てる環境としては良い都市だと感じながら、香港ライフを送っています。

 

まとめ

いかがでしたか?

 

日本とはまた違った香港の環境問題への取り組みを知っていただけたでしょうか?世界と比較すると環境問題対策に疎いと言われる日本。レジ袋有料化が11年も遅れていたという事実を知ると日本の対応の遅さがよくわかると思いますが、一方で、ごみの分別やリサイクルは国民性もあって日本の方が進んでいる印象です。

 

カンキョーダイナリーでは今後も香港について、2024年4月から始まるごみ袋の有料化や、2025年完成予定の焼却施設の進捗を引き続き追っていきたいと思います。


(参考1)香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部|「香港の基本情報」

(参考2)Census and Statistics Department|「人口推計」

(参考3)外務省|「香港基礎データ」

(参考4)Hong Kong Environmental Protection Department | 「Waste Blueprint for Hong Kong 2035」

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